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ハースストーン

対策カードの採用基準・後半戦

2016/02/08

こんにちは、杉本=ヨハネです。
前回の記事ではハースストーンというゲームの性質に触れました。
目の前の一戦に勝つことよりも、勝率を考えるのが吉。
その背景にあるのは、このゲームのランダム性だという話でした。
今回はいよいよこの記事の本丸、「対策カードについて」です。

 

◆対策カードとは?
ここで対策カードって呼んでいるのは、特定の条件を満たしたときに強力なカード群のことです。
対策カードって呼び方が、正式かどうかは分かりません。

たとえば、《ケザンのミスティック/Kezan Mystic》(以下「ケザン」)。
対戦相手の秘策を1つ、ランダムに奪うカードです。

たとえば、《ハリソン・ジョーンズ/Harrison Jones》。
対戦相手の武器を破壊し、その耐久力と等しい枚数のカードを引きます。

ケザンは、相手が秘策を使わなければただの4マナ4/3ミニオンですし、ハリソンだって同じです。
では、このようなカードを採用することは、当たり外れの大きなギャンブルなのでしょうか?

 

◆前回の記事のおさらい。
前回の記事で触れたことを、ここで思い出してください。
ハースストーンというゲームは「目の前の一戦」に勝利しようと思っても、なかなかままならないものだというお話です。
プレイヤーはただ、勝率をあげることしかできません。
ですから、対策カードを入れるかどうかも、勝率、つまり確率によって決められるべき事柄です。

 

◆ケザンの例。
ケザンを引き合いに出して、考えてみましょう。
このカードは相手の秘策をひとつ、ぶんどるカードです。
このカードは4マナ4/3のカードですから、マナコストおよびステータスとしては《手動操縦のシュレッダー/Piloted Shredder》と同じです。
《手動操縦のシュレッダー/Piloted Shredder》は「無作為に選ばれたコスト2のミニオンをあなたの場に召喚する」カードですから、「2マナ+カード1枚」の力を、断末魔として持っています。
これよりもお得であれば、ケザンを採用するべきだといえます。

 

◆秘策コストのバラつき。
秘策のマナコストは、ヒーローによって違います。
パラディンの秘策は1コスト。
ハンターの秘策は2コスト。
メイジの秘策は3コストです。

大ざっぱに考えて、平均するとケザンは「2マナ+カード1枚」の得をすることになるのですが、ここで忘れてはならないのは、相手から奪うという効果です。
相手が秘策を準備したさいに「2マナ+カード1枚」を(平均で)使っていることを考えると、トータルの得は「4マナ+カード2枚」ということになります。
決まったときには《手動操縦のシュレッダー/Piloted Shredder》の2倍ほど得をしていることになります。
それでは、このカードはどのぐらいの確率で「決まる」のでしょうか?

 

◆確率計算。
ここで、もう少し具体的な数字を取り出してみます。
ある月のヒーロー別対戦数を見てみましょう(説明しやすいように、少し数字を調整してあります)。

1位:パラディン 75戦
2位:メイジ 60戦
3位:ウォーロック、ドルイド 35戦
5位:ウォーリア、シャーマン、プリースト 25戦
8位:ハンター 15戦
9位:ローグ 5戦

合計300試合です。
このデータをもとに、次の月の戦い方を考えてみます。
次の月は新カードの導入のような大きな出来事がないので、前の月と似たような傾向が続くという前提に立ちます。

300試合のうち、秘策を持っているのはパラディン、メイジ、ハンターの3ヒーローです。
このヒーローとの対戦数はちょうど150。
2回に1回の割合で、秘策を扱えるヒーローと戦うことになります。
しかし、ここで気になる点が1つ、浮上してきます。
先ほど触れた、秘策コストのバラつきについてです。

パラディンの秘策は1コスト。
ハンターの秘策は2コスト。
メイジの秘策は3コストです。

当然のことですが、強い秘策を奪うほうが、勝率は高まります。
このことを考えると、メイジの秘策を奪うほうが、パラディンの秘策を奪うよりも、勝率が高まると予想されます。
しかしながら、対戦数をみるとパラディンが75、メイジが60ですから、1コストの秘策を奪ってくる可能性がもっとも高いことが分かります。

 

◆価値計算。
データの月におけるケザンの価値を算出してみましょう。

パラディンとの対戦が全体の25%。
「1マナ+カード1枚」を奪うので、トータルで「2マナ+カード2枚」の得です。

メイジとの対戦が20%。
トータルで「6マナ+カード2枚」の得です。

ハンターとの対戦が5%。
トータルで「4マナ+カード2枚」の得になります。

その他が50%。
得はありません。

(2マナ×25/100)+(6マナ×20/100)+(4マナ×5/100)+(0マナ×50/100)=1.9マナ

カードのほうは、50%の確率で2枚、50%の確率で0枚なので、平均1枚。

というわけで、平均値としては「1.9マナ+カード1枚」の得をするのがケザンというカードであることが分かります──この月においては。
このサンプルの月においては、ケザンを採用するよりも、《手動操縦のシュレッダー/Piloted Shredder》を採用するほうが得が大きいようです。

 

◆全員が秘策を使うの?
気をつけなければならない点をいくつか。
まず、秘策を扱えるヒーローが、すべて秘策を採用しているわけではないという点です。
また、秘策を持っていたとしても、引かなければ使えませんし、他にもっといい選択肢があって使わないという展開も考えられます。

そのような割合はデータがないので正確には分かりませんが、今回150戦した秘策持ちヒーローのうち、5%ていどからは秘策を見ることができませんでした。
そのため、先ほど示した「1.9マナ+カード1枚」の価値は、もう少し目減りします。

 

◆ケザンは流行っているの? あなたのヒーローは秘策使い?
あなたが秘策を使っている場合、ケザンの価値はわずかに上がります。
相手がどんなヒーローであれ、ケザンを用いてあなたの秘策を奪うかもしれません。
そんなときに、ケザンを使って奪い返せる可能性があるからです。
これは、ケザンが流行れば流行るほど、起こり得る現象です。

 

◆デジタルな分析。
ここまで計算を示しましたが、この計算はあくまでデジタルなものです。
ですから、参考ていどに扱うほうがいいでしょう。

実践的には、ここにアナログ的な思考や要素が加わって、この値が修正されます。

以下のようなものです。

「『2マナのミニオン』よりも『2マナの秘策』のほうが威力が高いし、そもそもミニオンと秘策は別モノだから、《手動操縦のシュレッダー/Piloted Shredder》と単純比較はできないよな」

「せっかく奪っても、相手にはその秘策がなにか分かっているのだから、価値は半減だ」

「他のカードとのコンボやシナジーが取りにくい」

「いや、敵のシナジーを断ち切れる」

「雄叫びは断末魔と違って『静寂』で潰されないし、出した瞬間に有効だから、《手動操縦のシュレッダー/Piloted Shredder》よりもケザンのほうが優秀だ」

そのような「数値化しにくい」部分に関しては、なにをどのぐらい重視するのかが、それぞれのプレイヤーに委ねられます。

デジタルな分析は、考え方の「土台」にすぎないのです。

(可能であれば「ミニオンと秘策」あるいは「断末魔と雄叫び」と比べるのは避けたかったのですが、よりよい比較対象が見当たらなかったため、マナコストとステータスが同じである点を重要視して今回《手動操縦のシュレッダー/Piloted Shredder》を比較対象に選びました。)

 

◆まとめ。
対策カード、環境によって左右されるカードは、このような計算方法に基づいて、基礎的な(デジタル的な)価値を算出することができます(このような方法で価値を決めにくいカードもありますが……その話はまた別の機会に)。
つまり、似たようなステータスをもつ、環境に依存しないカードと比べてみて、得かどうかを確率的に割り出す、というやり方です。

「ハースストーンひとくち新聞」などで紹介される「メタレポート」の活用方法でもありますので、参考になればさいわいです。

 

 

それではまた。

この記事を書いた人

sugimotojohn#1445(NA)
sugimotojohn#1445(NA)
アナログゲームライター。
ゲームブックやボードゲーム攻略本を書いて生きています。

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